日本臨床検査医学会 Japanese Society of Laboratory Medicine

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臨床検査専門医の声

臨床検査専門医の声
臨床検査専門医と病理専門医
(O医師)

現在、臨床検査専門医は、全国で約630 名、病理専門医も約2150 名、いずれも絶滅危惧種かといわれるほど数が少ないのが現状です。両者の専門医の少なさは、今後の医療に深刻な影響を与えることが危惧されています。米国では整形外科医数と同じ数ほどの病理専門医が いると聞きます。現に英会話を習っていたとき、欧米の講師の方々は、「pathologist(病理医)」という言葉、ほぼ全員知っていました。日本においては病理医を知らない人もまだまだ多く、それも専門医が少ないことの一因かもしれませんね。

私は、この臨床検査専門医と病理専門医の両方を持つさらにレアケースの医師です。どちらの学会に行っても、変わった人種と見なされてしまうのですが・・・まぁ、気を取り直して。この二つの専門医を持つメリットをここでは思いっきり宣伝したいと思います。

臨床検査専門医の場合は、血液・尿検査などの生化学検査、輸血検査、微生物検査、検査全体の精度管理等、臨床検査の幅広い知識が要求されます。一方で、病理専門医は、頭のてっぺんから足の先までありとあらゆる細胞や組織の病理診断が下せる能力が問われ、臨床検査同様、generalist 的な知識が要求されます。また、解剖診断にいたっては臨床経過から病態を知り、それを病理所見とあわせていくための知識、経験も必要不可欠です。よって、どちらも非常に似ている点が多いのですが、臨床検査の知識があれば、より病態を知る手かがりが増え、それは病理診断をする際に大きな力となります。

一例を挙げてみましょう。血液疾患の診断ですが、血液検査や骨髄検査(マルク)は臨床検査の分野に位置づけられていますが、同じ血液疾患でもリンパ腫となるとリンパ節の提出される先は病理検査室、すなわち病理専門医の分野となります。しかし、リンパ腫も白血化して骨髄にも浸潤することがあるわけで、同じ患者さんの検体なら末梢血、骨髄そしてリンパ節、すべて同じ医師が診断する方がずっと病態を早く正確に知ることができるわけです。これが、私の力の見せどころです!

臨床検査専門医の先生方は、私のように病理専門医をあわせて持っている先生も少数いますが、それ以外には血液内科や総合内科、輸血専門の先生もいらっしゃいます。特に内科の先生が臨床検査専門医を取得できるだけの臨床検査の力を持っていることは、大きな利点となるでしょう。内科を目指す研修医の先生方もいかがですか?臨床検査は奥が深く、面白いですよ!

あわせて、病理専門医のアピールも最後に・・・昨今、女性病理医が増えてきていることもあるように最も大きな利点は、子育てとの両立です。基本的に当直はありませんし、術中迅速診断や剖検以外はある程度、自分のペースで仕事を続けられる。顕微鏡さえあれば、家でも仕事ができる。現に私は、家に顕微鏡があるので仕事をしながら、子供たちを寝かしつけたり、横で宿題を見てあげたり、ながら仕事が可能!こんな形で仕事をできるのは病理医だけです。しかし、その利点だけではないです。もちろん、病理医の仕事そのものも最終的に病気の診断は病理医が下すわけですから、その専門性の高さと責任の重さは大きく、やりがいのある仕事です。様々な臨床の先生方と仕事ができるということも刺激的なこと!近年は、病理外来を開設する病院もあり患者さんと接する機会もこれから増えていくことでしょう。

いかがですか?臨床検査医と病理医。選択肢のひとつに・・・